石橋美術館閉館に思うこと

久留米市にあった石橋美術館。石橋財団が運営していたものが、財団が運営から撤退し、かなりの収蔵品を東京のブリヂストン美術館に移管するとのこと。その中には、久留米や筑後出身の有名画家の作品なども多く含まれており、本当に残念。

今回の展覧会(石橋美術館物語)も、過去の石橋美術館の展覧会を回顧する内容で、一回の展覧会に何回分もの内容が凝縮されたものでした。展示している作品は、東京のブリヂストン美術館にある有名作品も加えられて、教科書で見たような作品が次々に展示されている圧巻の内容でした。九州国立博物館以外の福岡の美術館でこれだけの質と量をそろえた展覧会はここ最近では記憶にないものです。ただ、「東京だったら行列になる」展示も、そこまで人は多くなく、ちょっと拍子抜けではありましたが・・・。

これだけの美術館、なんとか存続させる手立てはなかったのだろうかとつくづく残念に思います。久留米のみならず、筑後にとっても大きな損失です。秋から石橋美術館は久留米市美術館に改修され、そこへ石橋美術館の作品を200点寄託されて再開するようですが、これまでの規模や質を望むことは大変厳しいように感じます。「久留米の宝が東京に持って行かれてしまった」と言うのは言い過ぎでしょうか。

美術館を維持していくためには、かなりの手間とお金と時間がかかることが推測されます。その割に、そのプロセスや成果は一般に見えにくいのかもしれません。政治・行政・企業の力だけでは限界があります。

「ローマは一日にしてならず」ではないですが、「歴史と文化は、一日にしてならず」ということが当てはまりそうです。歴史と文化は、多くの人たちがかかわり長い時間をかけて築きあげていくもの。石橋美術館の閉館は、その当たり前のことがそんなに簡単でないことを改めて痛感させられた出来事でありました。